ピの図書館

ピの図書館へようこそ。このブログでは、ツイッターに掲載しない長編小説を投稿しています。

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

【瞬 第5話 秘密③】

…真梨side…… 毎回思うけれど、夢の国はどこまでも夢の国だ。 夏休みということもあり、人々でごった返すそこは、ディズニーランド。 ゲートを入る前から耳馴染みのある曲が流れ、どの人も幸せそうな笑みを浮かべている。 「着いたー!」 夏菜子が駆けだすと…

【瞬 第5話 秘密②】

…龍我side…… 「えっ、嘘!?」 廊下に貼り出された紙の前で、俺は目を丸くした。 1学期期末テストの成績上位30名が載っているのだが、なんと25位に俺の名前があったのだ。確かに真梨に教えてもらったところばかりが出て、今までになく自信があったけど……『こ…

【瞬 第5話 秘密①】

…真梨side…… 7月の教室は、いつもよりなんだか騒がしい。夏休みを目前に、みんな浮かれているからかもしれない。 「真ー梨っ! 夏休みどっか行こ!」 暑さを吹き飛ばすような夏菜子の声に、私も朝から爽やかな気分だ。 「ディズニー行こうよ! ディズニー!…

【瞬 第4話 恋③】

…龍我side…… 真梨は昨日より神妙そうな顔で、しかし時間通りに書庫にやってきた。 絶対に避けては通れない話をするために。 「真梨。今日、また呼んだのは……俺の、ことを話すためだ」 目を逸らさずに、はっきりと言う。彼女は、しっかり頷いてくれた。 「俺…

【瞬 第4話 恋②】

…真梨side…… 土曜日の夜。 私たち家族は、ひとつの携帯を3人で覗き込みながら、そのときを待っていた。 今日は、美tubeの更新日。紛れもなく、フラワーアレンジ体験をした回だ。 「にしても収録が5月半ばで、アップまで1ヶ月以上かかるってどうなのよ」 お姉…

【瞬 第4話 恋①】

…龍我side…… 休み時間、何とはなしに気になって携帯を開いた俺に、金指は不思議そうに尋ねた。 「なんかあったの?」 「ん、え、なんで」 「だって朝から携帯ばっか見てる。ていうか最近見すぎ。ISLAND TVでどんだけ携帯いじってる姿撮られてると思ってんの…

【瞬 第3話 距離③】

…龍我side…… 家に帰り着いたのは、午後10時を過ぎた頃だった。まだ明るいリビングではお笑い番組が点けられていて、弟が大声で爆笑している。 「ただいま」 「おー、おかえり」 「あら、龍我。おかえり」 高校生だし、仕事が仕事なので、このくらい遅くなっ…

【瞬 第3話 距離②】

…真梨side…… 試験勉強をしていると、ドタドタと騒がしい足音が階段を駆け上がってきた。 「お姉ちゃん!」 ガチャッと開かれるドア。何事かと振り向くと、制服姿の沙耶がスクバも下ろさずに立っていた。その手に持つ携帯のチャット画面はまだ明るい。 「お姉…

【瞬 第3話 距離①】

…龍我side…… 放課後の補習。 ふと窓の外を見やると、一般コースのサッカー部員が試合をしていた。 俺は部活をやっていない。幽霊部員になることが目に見えているからだ。 球技でいえばバスケが一番好きだけど、試合として観戦するにはサッカーも十分おもしろ…

【瞬 第2話 偶然③】

…真梨side…… そして、放課後の図書館。 大問題が起きた。 「…えっ、どういうことですか?」 驚いて訊き返す私に、サキ先生は顔の前で両手を合わせ「ごめん!」と何度も謝った。その仕草だけなら可愛い先生なんだけど… 「ごめんね真梨ちゃん。この後、司書ミ…

【瞬 第2話 偶然②】

…真梨side…… それは突然やってきた。 いつものように放課後に買い物してから帰り、夕飯を作っているとき。 _プルルルル 電話が鳴った。 「はい、水瀬です」 手が離せなかったので、子機を取る。知らない番号からだ。営業だったら適当に理由をつけて切ろうと…

【瞬 第2話 偶然①】

…真梨side…… 学校を出ると、オレンジ色の斜陽が目に眩しい。 腕時計を見ると午後5時を少し過ぎた頃。いつものように近所のスーパーに寄り、セールで値引きされた商品を狙ってカゴに入れていく。そろそろ夕飯を作り始める時間だ。リスト通り買い終えて、急い…